トランスファーは、エンジン、トランスミッションの後ろに搭載され、トランスミッションで増・減速された駆動力や回転を、前後のタイヤに分配して伝達させる部品です。駆動力をさらに減速させる副変速機構の付いたものもあります。 副変速機構付きのトランスファーは、急な坂道の登・降坂やけん引等のさらに駆動力が必要な場面で、トランスミッション(主変速機)の機能を補う役割も果たしています。
車両が走行するために必要な力を100とすると、2WD車では、2つのタイヤにそれぞれ50の力を伝え、またそれぞれのタイヤが地面を50の力でつかまえ、合計100の力で車両を走行させています。 これが濡れた道や雪道等の滑りやすい路面では、タイヤが地面をつかまえる力が減少します。また、タイヤは地面をつかまえる力以上の力が加わると、スリップや空転を起こしてしまいます。これらから、例えば滑りやすい路面で地面をつかまえる力が30まで減少したとすると、タイヤに50という地面をつかまえる以上の力を伝えてしまうと、スリップや空転を起こして走行できなくなります。 これに対し、4WD車では車両を走行させるために必要な力100を25ずつ分配してタイヤに伝えます。滑りやすい路面でタイヤが地面をつかまえる力が30に減少したとしても、4つのタイヤがそれぞれ25の力で地面をつかまえることができ、合計100の力で車両を走行させるため、2WD車よりも滑りやすい路面の走破性が高くなります。
トランスファーを大きく分けると、縦置きエンジン車用のトランスファーケース、横置きエンジン車用のPTU(パワートランスファーユニット)があります。 トランスファーケースをレイアウトで分類すると、入力軸と出力軸が同一直線上にあるセンタースルー式と、出力軸をオフセットさせているオフセットスルー式があります。PTUをレイアウトで分類すると、入力軸を直接ギヤで直交させて出力するタイプと、一段平行軸でオフセットさせてから直交させるタイプに分かれます。 またシステムで分類するとは、パートタイム式とフルタイム式に大別され、フルタイム式では、センターデフ式やオンデマンド式に大別されます。
縦置きエンジン車(主としてFR車)用のトランスファーケースは、2WDモードでは直接後輪へ駆動力を伝達し、4WDモードになると前輪側へ駆動力を分配します。前輪への動力伝達にはチェーンまたはギヤが用いられますが、大型車両向けにはチェーンが主流となっており、乗用車向けにはギヤが主流となっています。これは、ギヤの配置は、乗用車の小さなフロアトンネルでも自由度を持たせてレイアウトできるためと考えられます。
また、副変速機には、平行軸ギヤ式と遊星ギヤ式があります。現在では、小型軽量としやすく、またギヤ比を大きく取りやすい遊星ギヤ式が主流となっています。
4WDの車両は、2WDの車両に比べ燃費が悪化する傾向にあります。4WD車は構造上、プロペラシャフトやファイナルドライブの追加が必要で、これが質量およびメカ的なロスの増加につながり燃費を悪化させています。
我われユニバンスは、4WD車の燃費悪化を最小限に抑えるために、軽量で低フリクションのユニット開発を進めると共に、最適な駆動力の配分による、走行時のロスを低減させることを目指してユニット開発および制御開発を継続しています。
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